ハルカの国 創作の記その3

2018年総括

漫画・早春賦から始まり、ハルカの国で終わった。ハルカの国は終わってもいない。我が輩の2018が終わっただけである。
誰かと会い、飲むなり遊ぶなりした回数は片の手でおさまる。それも五本の指を使い切ることがないから唖然とした。こんな年は生まれて始めてだ。

恐らく来年はこれに輪をかける。ハルカの国を完成させる年なのだ。ハルカとユキカゼが2019を持って行く。平成が終わり、新年号を迎える年を、旧時代の物語に献げるのも感慨深い。
明治、大正、昭和、平成と続く物語を、新たな時代の幕開けに公開するのだ。
これはハルカの国着手当時より企んでいるアイディアでもある。

ふり返っても創作のことより他、思い出すことがないので苦労したことを一つ。
ハルカの国のネタバレはないよう努めたいので、我が輩の話をする。

雪子の国の創作から、記録をとるようにしていた。一日どれほど進捗があって、一枚のスチルにはどれだけ時間がかかったのか。一日でスクリプト化できるのは平均何文字か。
ハルカの国でもこれを続け、加えて日々ミーティングをするよう努めた。
ミーティングといって誰かと席を並べ議論するわけではない。
コピー用紙を二つに折り、片方に昨日思いついた議題を箇条書きする。
それから30分~一時間悩み、解決策の候補をあげていく。解決策は具体的な行動に落とし込み、行動に移す日時まで指定するのが決まり。

議題にあがるのは様々で、読み返してみると面白い。
カード明細のみなおしと、不必要なサービス退会を指示している日もある。
ペン先をコントロールするため、人差し指の力加減について悩んでいる日もある。
ツイッターを見すぎる自分に怒り、起きた瞬間スマフォの電源を切るようにと、赤のエクストラメーションマークで記している日もある。
食後のやる気減退が甚だしいので、一度に量を食べ満腹になるのを避け、日に五度の分食をすすめている日もある。
しかし何より多く登場しているのは、睡魔との格闘劇だ。

魔、と尻につくくらいだから、古くから睡眠への肉体欲求は人間を悩ませてきたのだろう。
と言って、我が輩は睡眠時間を削ってまで作業することはない。
一日、最低でも四時間は寝るし、普段は六~八時間寝るようにしている。
これは努めていることでもあって、睡眠の質をあげる努力もしている。
睡眠不足は物語の敵であることは、キリンの国にて経験済み。
しかし十分に寝ても、夕飯後には眠くなり、ラスト二時間の作業がとんでもなく苦しい。
記録によれば最良の昼寝の取り方を模索しているが、ほとんど失敗に終わっている。
二十分で切り上げるつもりが一時間、二時間と寝てしまう。
それで睡眠サイクルが崩れ、後に苦しむ。
なんで俺はこんなにも寝てしまうんだ……!
自分への苛立ちと不満、落胆が強い調子でコメントされていた。
日々、己の行動を抑止する行動評価表にはこうある。
「睡眠を制するものは、一日を制す」
「一日を制すは、すなわち、人生の主」
しかしその下に続くのは、睡眠計画失敗の数々。

どんだけ寝てんねん、お前。

ふり返れば笑える。笑える後から泣けてくる。
眠たいのを我慢したり、我慢出来なかったり、我慢出来ない自分に腹をたてたりしながら、やってきたのだな。
一日で見れば情けない失敗も。
成功と失敗が織りなす日々で眺めれば、これもまた錦。愛おしいものである。己より他は誰も愛おしんでくれないだろうから、我が輩は愛そう。
最良ではなかったかもしれないが、最良に努めた日々ではあったのだ。
いい子、いい子。
我が輩は自分を許すことが得意な人間であるから、生き易い。

2018年は2019年に報われる。平成の最後にはらった努力は、新たな時代のなかで結実するのだ。
咲かす花はハルカの国。結ぶ実は皆様の心、そこに広がる物語。
そう思ってこの不完全だったけれども悪くはなかった年を締めくくりたい。

ハルカとユキカゼの物語を描けたこと、彼女たちに寄り添える時間があったことを感謝している。
この二人のおかげで、今も情熱のなかで生きていられる。

国シリーズの今後

クラウドファンディングのページにて詳しく、また簡潔にまとめる。
なのでここではラフとして垂れ流したい。整理するにも一度吐き出すことが必要であるから、お付き合いいただければ幸いである。

予定として、国シリーズはハルカの国を入れてあと五本つくるつもり。
次回作は雲龍の国になるのではないか。視点人物、英彦山の姫・汐あたりで。
姉の視点から→わがままな妹(みすずの国)
兄の視点から→無鉄砲な弟(キリンの国)
兄の視点から→ツンデレな妹(雪子の国)
妹の視点から→聡明な姉ちゃん(ハルカの国)
ときたから、今度は
妹の視点から→厳格な兄(雲龍の国)
かなぁ、と考えている。これは変わるかもしれない。

雲龍の国(仮)を終えた時点で、全ての視点、舞台が整う。
ここからあらゆる人物の人生が、あらゆる角度と、あらゆる動機をもって激突する。
天狗の国を亡国へと導く、戦争が勃発するのだ。
結末は雪子の国を終えた方なら知っての通りだが、その結末に至るまで、何がおこり、人々の魂がどのようにぶつかりあい、また彼らの人生として如何なる結末を迎えていったのか、それを描きたい。

キリンと圭介。
ヒマワリと美鈴。
ハルカとユキカゼ。
他、あらゆる人々に戦争は〝結末〟をもたらす。
戦争と言うよりは、国の消滅、時代の終わりが、その国で生きてきた人々、その時代のなかで生きてきた人々に結末をもたらすのだ。
その如何ともし難い巨大なうねりのなかで、彼らがいかに生きたか、生きようとしたのかを見せたい。

最後に、新たな時代の萌芽、未来への物語として雪子の国の続編を描く。
国の消滅、時代の終わりに翻弄された、一人の少女。
彼女が新たな国で、新たな時代で幸せになる、その困難。その意味。
一人の人間が生きる姿は、決して一人の人間のなかで閉じているわけではない。
彼女の運命を削り上げる〝環境〟、その要因が、時代という時間軸のなかでいくつも存在した。それを彼女は自覚できないし、知る術もないが、物語を読み進めてきた読者の方々にはわかる。
雪子という戦禍の象徴、〝最後の子供〟が救われるという意味が、国々の物語を知る読者だけにわかる。
いつかこの国で、幸せになりたい。
その願いが叶う時がくるなら、どれだけの〝風景〟が報われるのか、観測者である読者だけが知ることになるのだ。

時代を越えて、人を越えて、風景を観測する。それが国シリーズの目指すところであったりする。

で。
キラキラ輝く志の話はこれぐらいにして、実務というか、夢のない数字の話をしていきたい。

国シリーズは我が輩が40歳を迎える2027年までの完成を予定している。
残り、約8年。
年数で眺めると膨大な時間があるように感じるが、時間になおすとまったくないことに気づく。
一年365日。七日作業して一日休み。何度かの骨休めを加味して年間300日八時間作業出来たとして、一年は2400時間。
2400×8=19200時間。
19200÷5=3840時間
これは現状のように一日八時間作業に割ける状態にあってこその算出でもある。
こんな恵まれた環境が八年間続くとも限らない。
つまりこれは最大値であって、恐らくその80~70%というのが現実的なラインであろう。
資金が尽きれば資金調達に励まなければならないこともある。
となれば一作品にあてられる実質作業は3000時間ほどで、これは長編ノベルゲームを作るに有り余る時間ではない。

我が輩は筆の早いほうでないから、30万文字のシナリオを書くのに四ヶ月はかかる。
これで900時間はとられ、そこから素材準備、スクリプト化が待つ。
スチルもこの度のハルカの国は体験版だけで50枚以上描いた。
今後もこの水準を維持するなら、あと200枚は最低必要になってくる。
スチルは難度にばらつきがあり、一概には言えないが、平均すると5時間ほどかかっている。
スチルで最低1000時間はもっていかれ、残すところ1100時間。
これでまだ最大の難所を残す。

立ち絵。差分作成。立ち絵指定。
これが我が輩の作品における肝であると同時に、大食いの化け物。作業時間をとにかく食う。
立ち絵もスチルと同様、難度がバラバラなのだが、この難度を極端に高めるのが衣服の柄。
無地のセーターやシャツなら、二時間もあれば描ける。
しかし規則性のある模様などつけ、それが肩周りから袖口まで連続していたりすると、倍かかる。
加えて、その後の差分、腕の動きにあわせて衣服が持ち上がったり、折れたり、曲がったりすると、とんでもないことになる。

明治越冬編、ハルカの衣装は本当に後悔した。あれが無地の小袖だったら、一月早く公開できていたもの。
しかしながら、民族衣装というものを少し学んでみると、縞模様は避けて通れない様子である。
縞といってシマウマのようなラインの繰り返しを言うのではない。
パターンの繰り返しを縞模様といって、手製で衣類を作る文化のなかでは衣類の強度をあげるため、また何より少しでも華やかに用いるために重宝されてきたようだ。
昭和の中頃までは、各農家に縞手帳なるものが存在し、家中相伝の〝おらが縞〟というものがあったのだとか。
と言うわけで〝縞〟は暮らしの匂いをたちのぼらせるために不可欠であるがために、今後とも我が輩を苦しめていく様相を呈している。

立ち絵に関してはいま一つ〝大食い〟の作業が残っていて、これが立ち絵指定。つまり台詞一つ一つに立ち絵をふり、人物の動きを描いていく作業。
我が輩は極力地の文は書かないようにしている。シナリオ段階で書いていても、ビジュアルをつけていく過程で情報が重複すれば消す。
例えば、立ち絵でハルカが唇を尖らせたとして、地の文まで「そう言って御仁は口先を尖らされた」と書く必要は情報伝達の上では無意味。音としてリズムをとる必要性がなければ、削ったほうがいい、と我が輩は考える。
文章にはサウンドというものが存在する以上、適所で鳴らさないと物語が音楽として濁る。音痴な物語になってしまう。
音痴な物語は飲み込むのに難しく、ビジュアルが頭に広がらない。
リズムある文章をつくるのは難しいが、技術として難度を落とす方法はあり、それは扱う音数を少なくすること。
この意味において、我が輩にとって立ち絵は「物語の音楽面を補助する」役目がある。立ち絵を描くことで音数(文章)が減り、音楽としての物語制御を簡易にしてくれるのだ。
であるから。
立ち絵はビジュアル面だけでなく、サウンド面でも物語に貢献する。
であるから。
どれだけ苦しく、リソース食い虫だったとしても、立ち絵を削るわけにはいかないのである。
立ち絵を削れば、ビジュアル面だけでなく、サウンド面でも物語は劣化する。

しかし、そうは言っても手間である。
作中全ての会話に立ち絵をつけるわけではないが、七割近くにはつける。
その数、雪子の国で、約5000回。
5000回、会話の度に「どんな表情だろう。手元はどんな様子だろう。心中はどうで、それは表情に表れているのか、あるいは隠しているのか」なんてことを考えながら、立ち絵リストを眺め、「これだ」と思うものがあれば「」の頭に番号をふり、なければお絵かきソフトを立ち上げて差分をつくる。
もう一度繰り返す。
その施行回数、5000。
「ここは手が口元にいったほうが、心中を表現できるな」なんて思いついた日には、顔だけでなく立ち絵そのものを弄くって差分を作らなければならない。
思いつくことの多い日は、一日が終わりかけているのにノルマの二割も済んでない、なんてことも多々あった。
この作業を残り1000時間内でやれ、と言われるときついのだ。

60×1000÷5000で、一つ12分以内に表情をつけなければいけない。
もちろん、ノータイム、それこそ三秒とかからずに既存の立ち絵番号をふるだけの会話も多い。
だが、腕の位置や、手の動き、服装の関係で新しく差分を〝描かなければ〟ならない箇所も多々ある。腕が動くような差分は一時間~二時間かかる。(縞模様がね! もうね!)
服装が丸々替わるとなれば、三時間コースだ。(しかもね、腕の上げ下げもね、全部やり直しなのね、最初から)
いや、きつい。

また1000時間丸々使っても駄目。スクリプトの演出や背景準備、BGMつけ等、まだまだ作業は残っている。
まだまだあるがここまで書けば3000時間がまったく〝潤沢〟ではないことは伝わったと思うので、ここ等でやめる。書いていて「計画破綻してないか……?」と不安になってきたので一回落ち着きたい。

作業時間を確保するという意識を常に、最大限に持っていないと3000時間を手にすることすら出来ない。
健康状態、日々の睡眠管理、懐具合に細心の注意をはらってこそ、得られるもの。
気を抜けば、生命線とも言えるリソース(時間)が我が輩の手の中からこぼれ落ちていく。
ただ生きているというだけで我が輩の手からは、今も、時間は失われているのだ。

集中しなければならない。
何よりも情熱をもって生きねばならない。
我が輩は「燃えて」いなければ、踏ん張りがきかない。
精神力こそがもっとも必要とされる。
その精神力を支えるのは、一過性のやる気ではない。日々の積み重ね、習慣である。
適度な運動。食事の栄養バランス。良質な睡眠。製作環境の整理と、対人関係トラブルの回避。経済面での安定。
いつだってグラウンドデザインである「2027・国シリーズ完成」を念願におくこと。
情熱は毎日毎日の積み重ねでしか灯らず、積み重ねのなかでしか保つことも難しい。
日々、6~8割の力で走り続ける。
6~8割の力で出来ることを底上げしていく。質を上げていく。
局地的に100%、あるいは120%の力で走り抜くことはあるだろう。
しかし常にそれでは身体も心も保てない。
満身創痍になり、頑張ってますというファッションアピールでは国シリーズは完成しない。
戦略をねり、計画をたて、日々改善と修正を加えて、着実に堅実に進めていかなければならない。

考えつづける。
これが何より必要だろう。
努力する、頑張る、全力を出すと口にして、その瞬間をがむしゃらに走ることは思考放棄だ。
頑張ることが目的ではない。
グラウンドデザインは「2027・国シリーズ完成」。
完成品を皆様に届けること。
この大原則を忘れず、残り八年、やっていきたい。

クラウドファンディングについて

もし貴方に余力があって、国シリーズに「力をかしてもいい」「助けてやれる」と思うならお願いしたい。
お恥ずかしい話であるが、預金が尽きそうで、ハルカの国完成まで走り抜けないかもしれない。
クラウドファンディングの他にも、どうにか資金調達できないかと、色々あたってはいる。
そこが上手くいけばこのまま続投できるが、やや怪しい。
最悪、数ヶ月出稼ぎをして間に合わせるが、そうなるとハルカの国の完成は半年~一年遅れてしまう。今、のっていることもあるから、中断せずに完成させ、2019中に皆様にお届け出来ればと思っている。

必要資金を算出してみると、以下のようになった。

返礼品作成資金 20万
創作資金 50万

合わせて70万。
クラウドファンディングは手数料が17%かかるので、70万得るのには84万ほど集めなければならない。

84万。

相当な額だ。
ちょっと集まる自信がない。
そこで現状、必要創作資金を出来るだけ少なく出来ないかとソロバンを弾き続けている。
ローカルファンディングとして親類あたり、かけあってみる。
あるいは創作過程で出来たアナログ素材(主にスチル絵)を売り払う。
予定では1200枚を越えるネームもあるから、それもまとめて売って何とか資金を作れないものか。
色々考えている。

年が明けて、一月~二月の間にクラウドファンディングは開始したい。そこまでどれだけ出来るか。東奔西走してみるつもりだ。

完成すんの? 大丈夫なの? いつ遊べるの?
と皆様を不安にさせてしまうことがあれば、大変申し訳なく思う。
計画が甘かった。ハルカの国が、あまりに大きくなり過ぎた。

ただホームページ上にも記したことであるが、完成は必ずさせる。
クラウドファンディングについては達成方式でお願いしたいので、資金が集まらないこともあるやもしれないが、それはそれで我が輩が出稼ぎをして何とかすればいいだけのこと。

完成すること、皆様の手元に届くことは確実であるから、そこは安心していただければと思う。

終わりに

2018年の最後。
ハルカの国、一章だけではあるが皆様に届けられてほっとしている。
完成してからやりたい! という声も聞こえてきているから、やはり完成を急ぎたい。
我が輩も一日でも早く、ハルカとユキカゼの物語を皆様の下へ届けたく思うのだ。

100年のビジュアルノベルと銘打ったこの度の物語。
銘に負けない物語にするつもりなので、どうか見守っていただきたい。
「ハルカの国」完成品として皆様の手元に届くことを、今は夢見ている。

今年もお世話になりあんした。
来年は猪。
あやかって猪突猛進の勢いを得たいものである。
よいお年を!