22本目 キャラクター創作論その5

 前回のプロフィールに続いて、今回は略歴について。

 これもまた多くの教本に「ストーリーが始まるまで彼らが何をしていのか、略歴を考えることでキャラクターへの理解が深まる」と書いてる。

 かといって19872月15日正午過ぎ3200グラムとして産声をあげる、なんて書いてても埒が明かない。(ちなみにこうして生まれたのは我輩である)

 そこで今日は我輩がいつも使用するKAZUKIメソッドをご紹介しよう。

 まず物語が始まる以前、ある一つの出来事をえらぶ。何でも良いのだが、恐らくこれその出来事は彼にとって重要な事件になってくるので、そうなってもさしつがえない物を選ぼう。

 隣の犬をからかってたら鎖の長さを読み間違えて尻を咬まれた、なんて話はよそう。

 出来事を一つ選んだら、それを短編の物語にしあげる。

 ちゃんと構成や盛り上がり、エンターテイメントを意識してつくるのが良い。本編を書く練習になるし、出来事を見つめる目が鋭くなる。

 こうして過去の出来事を短編として書くと、人物の物事に対する態度や、考え方、彼の周りの人物なんかがよく見えてくる。

 これは特に脇役に有効だ。脇役を主人公とする短編を書くことで、脇役のまわりにはどんな人物がいるか、それが見えてくる。彼らの人生というものが見えてくるからだ。

 ただその過程のなかで脇役への思い入れが強くなりすぎ、本編が冗長になるような脇役の活躍や脇役の脇役の登場などを頻発させるのは避けよう。

 あくまでこの短編は人物を知るために書くのであり、終ったあとは捨てるものだ。

 捨てる。

 この感覚を大切にしたい。自分が書いたもの、時間を割いたもの全てを大事にしてとっておくと、物語が水っぽいものになる。いくら苦労したものでも本編に関係がないものは捨てよう。その分、脇役の発した一言に違いがでてくる。削りあげる作業の工程で消えた物は、残り香をおいていくものなのだ。

 この出来事のショートストーリー化で掘り下げに成功したのが、「キリンの国」に登場する雲竜だった。

 彼ははじめ、単にクールな敵役でしかなかった。他の雑魚とは一味違うプライドをもった男だ、くらいには考えていた。

 しかしショートストーリー化を行なってわかったことは、彼は実は静かな優しさと小さきものを慈しむ心を持ち合わせていたということ。

 雲竜は昔、犬を飼っていた。元々は妹がお里で見つけた洋犬をねだって買ってもらったものだったが、世話に飽きてしまった。ほうっておかれている子犬を雲竜が可愛がった。

 雲竜は子供の頃から無口で、馬鹿騒ぎが嫌いだったから、よりそいながらも大人しい子犬を愛した。子供なりに寂しい時や、辛い時もあったが、それで愚痴をこぼしたり、まして涙をこぼす雲竜ではない。そういう時、雲竜は縁側に一人腰かける。すると子犬がやってきて、隣に座る。遊んで欲しいのか、棒きれや紐を次々にもってきては尻尾をふっている。雲竜は子犬からおくられる無垢な愛情に癒やされていたのだ。

 やがて子犬も歳をとり、老いる。別れの時がやってくる。

 犬が亡くなると、妹は大泣きをする。雲竜はその亡骸を庭に埋めようとするが、母親に虫がわくからと許されない。雲竜は犬の亡骸をだき、山にはいる。山の斜面に腰をおろし、夜通しそこを動かない。山犬や狐が焦りにくるのを一人見張りつづけるのだ――。

 ショートストーリーはこの後も続き、雲竜だけでなく父親である竜王丸や凪愛との話にもつながっていくのだが、今は関係ないので割愛。

 この時、夜の山のなかまんじりともせず、涙もながさず、ただ弟(雲竜は子犬のことをそんな風に思っていた)のために見張りをつづける。その姿が雲竜なのだと我輩は理解した。

 そこから雲竜に関わる様々なエピソードが出来上がった。

 雲竜はキリンの敵ではあるけれど、もう一人のキリンでもあるのだ。

 脇役にボリュームがでると、物語にもボリュームがでる。特に、主人公と対立する立場の脇役に厚みがでると物語は味わいを増すのでぜひお遊び程度にKAZUKIメソッドお試しあれ。

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