30本目 君のために学ぶ~世界観のつくりかた03~

前回は〝世界観をつくる上での基礎知識〟その必要性について語りすぎ、紙面がうまってしまったので、今回は基礎知識をいかにして得るかについて語っていきたい。

ある物語をみて、その世界観に惹かれ、自分でも作ってみたいと思ったのなら、分析をかけてみよう。
世界観の基本的な要素は、次のようにわけられる。

衣食住

まずはこれだ。
人がどのように着物をまとい、どのような物をいかにして食べ、どんな風にどれくらいの人々と暮らすか。
これは一言で言うと、文化、ということになる。
衣食住の三要素からなる文化に分析をかけると、世界観の素が見えてくる。
どれほど作り込まれているのか、じっくり観察しよう。「世界観が良い」と思えた作品は、驚くほど緻密に細部が作り込まれていることに気づく。少なくとも、作品上に見えている物の十倍は見えていないものが作り込まれている。
ただ町ですれ違う娘達の着物一つとったって、着こなし方に階級、年齢、それぞれの要素が加味されているはずだ。
感動をうけた作品からは、衣食住三要素の作り込みの深さを学ぼう。どれくらい考え抜けばいいものなのか、程度を知るのだ。

しかし何故、「衣食住」の三要素が基礎要素となるのか。
政治、経済、歴史、地理、宗教、あるいは魔法の体系や、化け物たちの性質、武術の達人たちの名前。
その他にも世界観を彩る様々な要素がある。なのに何故「衣食住」なのか。

これこそ以前話した、「世界観をつくる基点を人におく」という姿勢の問題なのだ。
衣食住。
これはそのまま市井の人々の営みを現す。
衣食住とは、政治、経済、歴史、地理、経済、宗教、あるいは魔法の有無あわせて、あらゆる要素がいかにして人々の生活のなかに現われているか、その姿なのである。

例えば、魔法で暖を取る術があったとする。
それが世の中の人々、あまねく使えるような世界だったら、冬の衣服はどのようだろうか?
夏のように動きやすい薄着なのか。あるいは暖を取れると言っても、エネルギー効率からいって衣服に頼ったほうが効率的であるから、ほとんどの場合まともに服をきるのか。
空気の層をつくって外気への熱伝導を妨げる魔法なら、寒くなるまでに時間がかかるだけで、いつかは寒くなるからやはり服は必要かもしれない。エネルギーを加えて衣服を加熱する魔法なら、要所要所に密度の高い鉱物をしこみ、それを湯たんぽのように加熱するかもしれないし、鎖帷子のようなものを着て、それを加熱してぽかぽかするのかもしれない。

衣食住を考えるということは、衣食住から考える、ということで、それはとりもなおさず「人を基点にして世界観を構築していく」ということになる。
ハリーポッターの世界観が素晴らしいのは、彼らの着たり、食べたり、住んだりする隅々にまで魔法が張り巡らされ、生き生きと根づいていて、本当にそんな世界があるように思えるからだ。
テレポーテーションがある世界で、未だに朝の通勤ラッシュに悩んでいるサラリーマンがいるようだったらその作品を見る気は確実に失せるだろう。

衣食住。これが世界観の基本だ。気になった作品は衣食住を観察し、しっかり見極め、現実からは良い素材を集めよう。