ハルカの国 創作の記その9

夏コミには無事受かって、ほっとしている。
四日目(2019/08/12) 南館 ヤ30b――そこに我が輩はいる。良ければおいでませ、お待ちしております。

品は

ハルカの国「明治編(越冬編+決別編)」のディスク 500~1000円 50部持参
雪子の国通常パッケージ版 1000~2000円 50部持参
漫画・早春賦 500円 10~20冊持参
ホオズキアクキー 500~1000円 各デザイン 10個程度持参

を予定中。
制作費を抑えるため、最小ロットでの作成を考えている。(100部つくるのと、50部つくるのでは値段が倍違う)

夏コミには受かってほっとしているが、ほっとしていない心もある。
ハルカの国の進捗がうまくない。不味い。
現状と、遅延の原因、その改善方法を以下に記していこうと思う。

予定より二ヶ月遅れ

作業工程表において、二ヶ月前に仕上がっているべきことに未だ取り組んでいる。
年始の予定では、五月末には「ハルカの国・決別編」は完成し、六月、七月は「大正決戦編」「昭和春秋編」のシナリオ執筆にあてるはずだった。
それが実現出来ていない。

原因はシナリオの難航で、二月に書き上げていた「決別編」のシナリオを書き直してしまった。
しまった、と言って、これは必要な処置であったから仕方ない。恨むべきは、初稿で物語を〝見抜け〟なかった我が輩の眼力。物語の〝筋〟を捕えてきれなかった力量不足。
そのために情報の価値判断が有耶無耶で、どの情報も同じ程度に取り扱ってしまったために、序盤の展開に弛みが生まれてしまったのだ。

物語における情報処理

情報の価値とは何であるか。これは二つの基準によって決まると考える。
一つは、読者の欲求。
読者が「知りたい」と思う情報は、価値がある。これを提示したからと言って、「冗長」とは思われない。求めていたものだから、枯渇していた大地が慈雨を飲み込むように、容易く吸収していく。

二つ目は、筋への貢献。
この筋への貢献はさらに二分して考える必要がある。
「筋への捕捉」と、「筋の発展」だ。
「筋への捕捉」は筋の動機に対する情報をさす。
「お姫様を魔王から助ける」筋があったとして、お姫様がどれだけ善人で救出するに値するか、また彼女がいないことで王国がどれだけ窮するか、物語に動機づけしていくのが「筋への捕捉」情報だ。
「筋の発展」は「浚われたお姫様が何処に隠されている」だとか「魔王の弱点は何だ」とか、筋が解決に向かって進んでいくための情報をさす。
物語の〝筋(ストーリーライン)〟は強力な動機と、段階的かつ加速度的な発展を必要とするため、上記した二つの情報「筋への捕捉」と「筋の発展」はストーリーテイリング上価値がある。

読者の興味と、物語上の必要性。
この二つを重ねるように情報をさばくことが語りの情報処理技術になるのだが、筋が明確でないと後者が定まらず、「必要にして十分」な情報量を割り出せない。
どれもこれも欠くことの出来ない最重要項目に思え、あれもこれもと詰め込んでしまう。
詰め込んでしまった。
結果、物語が太った。
説明や語りが連続し、BGMやシーンの切り替えではさばき切れない。リズムが出ない。
情報も非連続的であるから、脹らんだと思えば萎んで、脹らんだとは思えば萎むを繰り返す。
たとえるなら、バスケットの試合。
逆転をねらったスリーポイントシュート。ボールが弧を描く。主人公の回想が始まる……終わる。ボールが弧を描く。ライバルの回想が始まる……終わる。ボールが弧を描く。親友の回想シーンが始まる――。
といった具合。
クソつまらん。

物事は「関係性」によって意味と価値がうまれる。
音楽を例にとればわかりやすい。一音、一音では意味を成さないところ、前後の音との関係によって、調和、旋律、リズムが生まれて、時間軸をもった音楽となる。
物語もまた音楽と同じで、シーンの一つ一つでは描写に過ぎないところを、〝繋ぐ〟〝連続させる〟ことによって「関係性」が生まれ、意味や価値を発展させていく。
つまり物語は連続的でなければならない。崩しや抜きという技術を使うにしろ、「連続」を意識した上であえての外しでなければならい。
この「連続性」という大原則が、この度、情報の肥満によって阻害されてしまったのだ。

因子と改善策

失敗の原因をまとめる。
「筋」への理解が浅かったため、情報の取捨選択が出来ていなかった。
ベクトルが違う情報をいくつも抱えたため、展開に連続性を持たせることが出来なかった。
序盤の展開がぶつ切り状態となり、助長かつ退屈なものとなってしまった。

改善方法は明確。
「筋」への理解を深めること。「筋」というスケールをもって、情報に序列をつけ、分類すること。最重要な情報にこそ読者の興味が向くように、他の情報は〝引かせる〟こと。
物語が地に足着く前の序盤である。
読者の興味が分散しないように、最新の注意を払わなければならない。

この度も、ひぃひぃ言いながら物語を削りあげ、組みなおし、どうにか形にした。
改善は叶ったと思うが、払った犠牲は大きい。二ヶ月の遅延が発生してしまった。

今後の予定

「明治決別編」を今夏に発表するのは、何とか間に合う。
しかし残り「大正星霜編」「大正決戦編」「昭和春秋編」「昭和永訣編」を、冬までにくみ上げるのは難しい。「大正星霜編」のシナリオは出来ているが、なおしが必要であるし、決戦編からはプロットしか上がっていない。

また予定した以上に各章のシナリオが脹らんでいる。
このままでは「ハルカの国」総プレイ時間が20時間を超すかもしれない。何とか削り抑えていくつもりだが、どこまで出来るか……。

とりあえず夏コミへの参加、夏コミに合わせた「決別編」の発表を目下の目標として進めていく。その後は改めてスケジュールを組み直し、創作スタイルに改善を施さなければ年内発表は難しい局面だ。

このような事態に陥り、大変申し訳なく思う。
我が輩に「物語りを見抜く」力が備わっていれば、二ヶ月の遅延は起きなかった。
能力不足を痛感している。
ミスを減らし、生産性を上げなければならない。
忸怩たる思いだが、やるべき事を明確にし、反省を活かしてこの度の失敗を有益な経験としていきたい。

「ハルカの国」。
最大クオリティを保ちつつ、可能な限り早く皆様のお手元に届けたいと思っております。
作品の巨大さが未経験の領域にあり、かつ、舞台が過去作品から飛躍的に広大となったため、〝手に負えていない〟状況ではありますが、作品に引かれ日々成長している感覚もあります。
「ハルカだけに、はるかに上回る」なんて下らない駄洒落を、プレイ時間だけでなく、クオリティにも当てはまるようこれからも精進してまいります故、見守っていただければ幸いです。

会える方は夏コミで……!