32本目 君のために学ぶ~世界観のつくりかた05~

 前回に引き続き、世界観を探る目を育てる勉強方法について紹介していきたい。

 実生活での体験、読書、この二つが大きな柱になる。またこれらは日々の繰り返しであるから弛まない努力を続けたい。

 とは言っても、我輩も週に二度か多くて三度くらいしか料理はしないし、本も月二~三冊読むか読まないかだ。難しい本にあたると一月かかりきになることも。

 もう少し精進したいとは思っている。少なくとも今年からは毎日料理をし、読書の時間も確保していくつもりだ。

 さて、三つ目の勉強方法として我輩が勧めるのは旅である。

 旅はいい。

 感覚が研ぎ澄まされる。

 我輩、一昨日の夕食はもはや思いだせない頭になってしまったが、旅にでた折に何を食べたかは全部覚えている。

 それも八年前にでた青春18切符による四国旅行で何を食べたか、今でも思いだせる。浜辺にテントを張って寝ようと試み、あまりにも寒くて「これは死ぬな」と飛び起き、夜が明けるまで知らない町を歩き続けたのを覚えている。

 普段の生活を離れれば、感覚が研ぎ澄まされる。恐らく、安全を確保するために敏感になるのだろうが、知らない駅をおりて一目見る町の新鮮さは何度味わってもいい。生れ変わる気がするものだ。

 そうして研ぎ澄まされた視点で旅館などにとまると、色々見えてくるものがある。天橋立を見に丹後へ旅行に行った際、宿で丹後縮緬の着物があり、そこで興味をもって帰った後に資料を漁った。

 本だけの知識だったら勉強する気は起きなかっただろうが、宿での体験があったので強く印象に残った。

 鳥取の境港に向かう電車の最中、伯耆大山の雲に隠れたるその様子。境港からのぞむ島根県。そういう強烈な印象があればこそ、古代出雲の歴史について書かれた新書も抜群の興味をもって読み通すことができるものだ。

 感覚が研ぎ澄まされること、強烈な印象をもてること。

 旅は世界観を作る力を育てるのに、滋養となる。

 最後は、最初の体験にも通じることだが、衣食住を楽しむこと。

 食べることを楽しみ、料理を楽しみ、料理とともにする酒や音楽、器やテーブルクロスを楽しもう。出来れば野菜を育て、食というものをできるだけ〝買わず〟につき合ってみるのがいい。

 季節折々で服をえらび、靴をあわせ、アクセサリーで印象をかえよう。我輩のように住む場所をしょっちゅう変えるわけにはいかないかもしれないが、部屋は掃除をして利便性を高め、気持ちがやわらぐポストカードの一つでも置こう。十万円もするような椅子やテーブルは買えないかもしれないが、少し値は張るが気の利いたペンホルダーやブックエンドくらいは買えるかもしれない。そういう自分が選びぬいたもので部屋を満たしていけば、部屋に帰ることが楽しくなる。

 この楽しむ気持ちが、物語世界観を育てる目やカンを育てる。

 こういうことは女性の方が得意かもしれない。しかし男だからって無関心ではいけない。男は男なりのこだわりってものがあるはずだ。衣食住の楽しみを女性ばかりに譲っていてはいけない。

 衣食住を楽しみ、豊かな世界観を作れる下地を養おう。

 ちなみに我輩は衣食住のなかでも食に大変興味があり、好きだ。

 食べることも好きだし、飲むことも好きだし、料理することも好きだ。

 忘れられないのは語学留学時代に、昼の三時から夕食の買い物に友達とでかけ、材料とビールのパックを買い込み、まず簡単なつまみを作って飲みながら料理をしたあの時間だ。

 バックパッカー用に大きなキッチンがあったから、皆でワイワイと料理をして実に楽しかった。

 スピーカーで音楽を流すこともあれば、誰かが楽器を演奏してくれることもあった。我輩も三線を演奏して美声をひろうした。(賛否両論ではあったけれど)

 また子供の時分のクリスマス、母親が朝から料理の支度をしてくれて良い匂いに満ちた居間に次々の皿が並べられていったのも忘れられない。カセットテープに吹き込まれていたクリスマスソング特集もやはり耳に残っている。

 別段、裕福な家庭ではなかったが、親がイベントを大切にしてくれたので色々覚えている。特に食事に関しての記憶は鮮やかに蘇らせることができる。

 我輩が飯のシーンにやたらと拘るのは、それが生きることの基本的な風景に思うからだ。恋も戦も何にしたって腹が減ってはなんとやらで、食わねば始まらない。

“32本目 君のために学ぶ~世界観のつくりかた05~” への2件の返信

  1. おおう!

    フリームにいつの間にか体験版が!

    というか 有明の情報が!

    C92一日目こー18b かあ

    一日目というと11日かな  会社休めねば!

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