3幕目~解決~
真の変身をとげた後の物語は、ベクトルが固定しているので難しいことはない。
ただ主人公と最後の敵とを戦わせればいい。
この最後の敵は、この勝負の勝利が物語の目的の解決になるように設定しなければならない。
ロードオブザリングならサウロン(指輪にこめられた魔力)である。これを滅ぼせば悪の軍団は根絶やしにされ、世界に再び平和は戻ってくる。それは三部作のなかで嫌と言うほど繰りかえされてきたルールだ。
キリンの国において、圭介と化けの決闘はさほど重要ではない。それより前、暗い水のなかを潜ることが圭介の死闘であり、物語の目的である、今の自分から変わりたい、大切なものを大切にする勇気がほしい、という願いを解決することに値する。
第3幕は物語構成として複雑なことはなく、簡単だ。
三幕目は疲れる
最後の敵との戦いは、物語最大の山場。もっとも盛り上げなければならないし、戦いも手に汗握るものでなければならない。
余談ではあるが、「キリンの国」もこの第3幕には苦労させられた。
開発期間がおよそ三ヶ月かかった「キリンの国」だったが、物語のおよそ20%も満たない第3幕に一ヶ月かかった。体力もかなり削られ、最後のほうは少し頭がどうかしていたと思う。オブザーバーの友人からも「あの時話していることがおかしかった」と後に言われた。缶詰状態が長引き、精神的にも不安定になっている状態で、〝キツい〟シーンの連続だったからだろうと分析する。
今は元気ですよ。
それぐらい体力を使うのが第3幕。
ラストスパートだ。息切れしないようにだけ気をつけよう。せっかくここまで上手く物語りを運んだのに、ここを失敗すると尻すぼみになる。骨くらい誰かが拾ってくれるだろう、という意気込みで頑張ろう。
方法論は特にない。
アクションの描き方はまた別に書く。
様々な映画を見て参考にするのが一番。刺激になもなる。
ちょっと短めに終ったので、「キリンの国」制作の思い出を少し。
第3幕を書いている際、雲竜がとるべき行動についてオブザーバーと大喧嘩した。大喧嘩といっても、我輩は腹をたてると黙りを決め込むタイプなので、ムスっとしたまま作業を続け、オブザーバーは理屈屋だったので何やかやともっともらしいことを言っていた。
腹が立ってしょうがなかったが、喧嘩しててもしょうがいなので、仕方なく二人でホオズキの立ち絵について話し合った。ホオズキの手につく泥がどんな風か、転ぶ真似をしながら、あのチビ助が受け身をとるかとらないかで談義をした。
それで少し冷静になれ、とりあえず雲竜の件は今話し合うのはよそうということになり、飯を食った。
後に、オブザーバーの意見を取り入れて今の形になっている。
今ではあれは我輩が間違っていたと思う。
ただいつも人の言うことばかり聞く素直な我輩ではない。納得できなければ絶対にやらない。
我輩は完璧主義ではないが、頑固なのだ。
この性格を以前の職場では「無意味な正義感」「一緒にいると疲れる使命感」といわれ、難儀した。
思えば仕事をやめると上司に伝えた後も、散々「お前は頑固すぎる」「頭がかたい」「もっと柔軟に物事を考えろ」と言われた。仕事をしながらでも夢は追えるだろ、というのだ。
器用な人間ならね。我輩はそうではない。